「最近、運悪くカキにあたる」毎回発症することを不審に思い詳しく検査 ついに確定診断がくだった!

 広島県出身の30代女性は、毎冬実家から送られてくるカキが大の楽しみでした。ところが、夕食でカキフライを食べた深夜、ひどい腹痛と下痢、吐き気が生じ、ノロウイルス性腸炎と考え、自宅で安静にしていました。後日実家に帰省し、何の不安もなく生カキを食べたところ、数時間後、またもひどい腹痛と下痢を起こしました。

 実家の広島で食べる鮮度の良いカキで、ノロウイルス腸炎を疑ったものの、一緒に食べた家族は大丈夫でした。彼女は「最近私は運悪く、よくカキにあたる」と感じました。その後も彼女は、カキでおなかを壊すことが何度も続きます。その度にひどい腹痛を伴うため、主治医に相談して専門医に紹介されました。

 紹介先では、これまで問題なくカキを摂食できていたが突然発症した。カキ摂食時に毎回発症する。摂食後、数時間たって発症する。ひどい腹痛、下痢、吐き気の症状を呈する。カキの特異的IgE抗体検査は陰性。以上から、カキの経口負荷試験を実施し「食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES=エフパイス)」との確定診断が下りました。加熱したものやオイスターソースなども含め、今後、カキは食べないよう指導されます。

 あまり聞きなれない「食物蛋白誘発胃腸炎」ですが、「消化管アレルギー」とも呼ばれます。実は1990年代末から世界的に発症が増加していたのですが、検査できる医療機関が少なく、検査方法が煩雑。症例が少ない。原因がわかっていない。有効な治療法がない。などの理由で、医療の世界でもそれほど注目されてきませんでした。最近ようやく患者データが揃い始め、少なくとも小児の原因食物として「鶏卵」と「大豆」がほとんど、ということまでは判ってきました。今後の研究情報が待たれるところです。

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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